では財産権の保証はどう行うのか
写真:白山市のフリー写真素材より
憲法改正は9条より9条以外の方が影響力が大きいのであるが、影響が大きくなるであろう権利の1つが財産権である。
例えば現行憲法29条は財産権に対して「国家であっても犯してはいけないもの」と定義されている。
では改正憲法はどのようになるのかと言えば、国家に保証されるものに変わるのである。
問題は「どのように保証されるのか」ということである。
品質保証であればISO9001を取得したり、設計から出荷までの一連のプロセスを作り込むことによって品質を保証していくのであるが、国家による財産権の保証とは何なのか。
品質保証の世界であれば品質表の展開(QFD)によって定義されるが、国家による財産権保証とは一体どんなプロセスで保証されるのかが不透明である。
また、改正憲法29条の2項は「ただし公益及び公の秩序のために法律で制限できる」と言う[免責事項]もセットで存在している。
果たして日本政府が債務危機に陥った場合、国民の持つ資産は公の秩序の為に制限されないと言えるであろうか。
甚だ疑問である。
財産税の反省に立っている
現在の日本国憲法29条は1946年に行われた預金封鎖、1947年に施行された財産税の反省を受けて作られている。
憲法29条と関わりの深い法律が赤字国債を禁じた財政法4条であるが、これも預金封鎖⇨財産税/デノミネーションと言った当時の反省に立ったものだ。
少なくともアベノミクス以降から見る積極財政政策から、当時の預金封鎖や財産税に対する反省は見受けられない。
政府の財政が悪化した国ほどMMTのような楽観財政論が隆盛を極めるのも歴史的に繰り返されたことである。
18世紀フランスのジョン・ローシステム、ヴァイマル共和国における中央銀行の国債無制限引受、2000年代のジンバブエやベネズエラなど「自国には通貨発行権があるから問題ない」と言う楽観説は何度も繰り返されてきた。
その末路は全て破綻と言う結末を迎えている。
現在のMMTも同様である。
そもそもMMTにはインフレ制約があり、提唱者であるケルトン教授は財政規律を無視した人ではなく、インフレが始まったら課税や財政調整は必要と考えていた。
2022年からはインフレ時代に突入しており、正に課税や財政調整が必要な時期である。
岸田政権などはインフレ時代に於ける無責任な積極財政は良しとはしていなかったが、高市政権はアベノミクスを継承した積極財政を行いたい願望が強い。
その結果として構造的な円安が続き、財務省が為替介入を行なっても円売りは粘着している。
マイナンバーを巡る動き⇨預金封鎖の再来は起こり得る
少なくとも1950年〜2020年までの日本では、預金封鎖を行うための壁は幾重もあった。
現在においても財産税は実質的に難しいが、実際に1946年の預金封鎖や1947年の財産税を行うために必要なのは「国民資産の正確な把握」である。
現代に於いてこの点についてはマイナンバー制度で、ある程度の資金の動きを把握することは可能だ。
2021年から銀行口座や証券口座へのマイナンバー紐付けが求められるようになり、現在に至っては暗号通貨の口座にもマイナンバー紐付けが必要となっている。
また、財産税を現在の憲法下で実施するのは難しいものの、憲法改正後も同じことが言えるとは限らない。
まして改正憲法で焦点になるものは公共の福祉(みんなの幸せ)ではなく「公の秩序」である。
「自国建て通貨は破綻しない」
この行先は歴史的に見て破綻すると言う点は同じだ。
「今回は違う」
これも毎回言われてきた。
その行く末は大増税、通貨リセットである。
少なくとも憲法改正に於いて本当に争点にすべきは9条ではない。
29条にこそ焦点を当て、資産の防衛を考慮すべきである。
