コンビニおにぎり200円の時代へ
インターネットの普及に伴い、既存の主要政党とは異なる独自の支持基盤を持つ「ネット政党」や「デジタルポピュリズム政党」が急速に勢力を拡大している。日本において比例代表制の実質的な廃止や縮小が議論される際、ネット上で激しい反対運動が巻き起こる背景には、こうした新興政党が比例代表という選挙制度に深く依存しているという現実がある。国会論戦において参政党をはじめとする諸派の議員がこの方針に強く反発している様子は、比例代表制の変更がいかに彼らの死活問題であるかを物語っている。
近年のポピュリズム政策を牽引するネット政党の多くに共通する特徴は、国家の財政規律を軽視し、何かにつけて国債を財源に充てようとする極端な積極財政論である。一見すると国民の負担を軽減するかのように聞こえる「財源なき減税」や「無限の貨幣供給」といった主張は、ネット空間の強いエコーチェンバー現象を通じて急速に拡散し、支持を集めていく。しかし、このような政策がもたらす経済的帰結は極めて明白である。
無秩序な通貨供給は紙幣の価値を必然的に下落させ、外国為替市場における自国通貨安を招き、最終的には物価の高騰という形で国民生活に跳ね返ってくる。
生活実感としての物価高は既に深刻なレベルに達している。
例えば、コンビニエンスストアで販売されている一般的なおにぎりの価格を振り返ると、かつては110円程度で購入できたツナおにぎりが、現在では200円近くにまで高騰している。
この約10年間における価格推移は、消費税の税率に換算すれば数十パーセントもの増税に匹敵する負担増であり、国民の購買力が毎年確実に削られてきたことを示している。
このような構造的インフレの背景には、利便性を追求するネット社会の裏側で進行する、財政ポピュリズムの影が存在しているのである。
財源なき積極財政
通常、明確な財源の裏付けを持たない減税や巨額の財政出動を強行すれば、国際金融市場における通貨の信用は一気に崩壊し、その国の通貨は容赦なく叩き売られることになる。現在の外国為替市場における深刻な円安水準は、日本という国が備えるべき長期的な財政規律に対し、国際的な金融市場が厳しい不信任を突きつけていることの証左にほかならない。主要通貨に対して歴史的な安値を更新し続ける現状は、国家の購買力が急速に衰退している惨状を表している。
英国の事例を引くと、かつて財源なき大規模減税を打ち出したトラス政権は、金融市場の激しい拒絶反応に直面し、わずか数十日で退陣に追い込まれた。
対照的に、日本においては同様の財源なき積極財政や減税論を標榜する高市政権が既に9ヶ月以上も継続しており、その間にも円の購買力はジワジワと侵食され続けている。それにもかかわらず政権交代や内閣総辞職といった決定的な政治的リセットがかからない背景には、一度社会に定着してしまった減税ポピュリズムの波を止めることが極めて困難であるという病理が存在する。
自民党側から見れば、保守系新興政党やネット政党に流出した過激な支持層を呼び戻すための防波堤として現政権を利用せざるを得ないという側面もある。
少数政党の乱立と立憲と公明の合流
さらに、政権の交代や刷新を阻むもう一つの大きな要因となっているのが、比例代表制の存在によって引き起こされる野党の過度な乱立構造である。
比例代表制は、組織力や地域基盤を持たない新興のネット政党にとって極めて有利なシステムとして機能する。
かつて「れいわ新選組」が初期の選挙戦略において、制度上の隙を突く形で効率的に議席を獲得した手法は、いわば「比例代表制の構造的脆弱性」を利用したものであった。現在の参政党なども基本的にはこの戦略を踏襲しており、ネット上で声の大きい少数の熱狂的支持層を集約できれば、比較的容易に国政への足がかりを得られる仕組みになっている。
その結果、野党陣営は細分化されてまとまりを欠き、与党側の失政があっても政権を脅かす強力な対立軸が形成されにくいという、与党側に有利な膠着状態が生み出されている。
日本の野党共闘における近年の最大の構造変化は、公明党が長年続けた自民党との連立を解消し、立憲民主党との合流へ舵を切ったことであろう。
しかし、この劇的な再編は、かつての保守的なリベラル層や立憲支持者から強い失望と不信感を買う結果となった。
公明党の本質が宗教政党である以上、この合流は政治的信条の野合であるとの批判を免れないからである。
本来、自民党と旧統一教会との癒着や不透明な関係を厳しく糾弾するためには、批判を行う野党の側が宗教的影響力から完全にクリーンであり、中立の立場を維持していなければ説得力を持たない。
本来、近代国家における政治の本質とは、特定の宗教的ドグマや教義から完全に独立したものであるべきである。政治運営はどこまでも客観的な事実、検証可能なデータ、そして合理的な科学的プロセス「のみ」に基づいて遂行されなければならない。
感情的な世論や組織票の論理によって政策が歪められることは、国家の長期的な利益を損なうことにつながる。
したがって、立憲民主党と公明党という異質な勢力が再び分離し、それぞれの立ち位置を明確にしない限り、野党第1党を中心とする陣営が国民からの広範な信用を回復することは不可能な情勢である。
この野党側の混迷と自己矛盾こそが、結果として現行の政権運営に対する牽制機能を麻痺させ、長期的な政権維持を許す最大の要因として作用しているのである。

